『異世界転移した42歳のおっさん、辺境で食堂を始めたら「あなたを夫にしたい」と女公爵に求婚されました ~料理と家事しかできませんが、この世界では最高の旦那様らしいです~』
四十二歳、独身。食品会社の総務部で二十年近く働いてきた三枝宗一郎は、ある日の仕事帰り、突然見知らぬ異世界へと転移してしまった。
剣術なし、魔法なし、特殊能力なし。若返りもしなければ、伝説の勇者に選ばれたわけでもない。
宗一郎にあるのは、長年の一人暮らしで身についた料理、掃除、洗濯、家計管理、ちょっとした修繕、そして面倒な相手ともどうにか話をまとめてきた「普通のおじさん」としての人生経験だけだった。
そんな宗一郎が異世界で最初に出会ったのは、街道脇で傷を負って倒れていた一人の女性。
応急処置をして、手持ちの食べ物を半分分け、腹を空かせた彼女に飯を作ってやった宗一郎だったが――迎えに来た騎士たちは、その女性の前で一斉に跪いた。
「公爵閣下!」
彼女の正体は、北部辺境を治める女公爵レティシア・アルヴェイン。
戦場では“銀狼公”と恐れられる最強の女公爵だった。
ところが彼女は料理も家事も壊滅的。さらに恋愛経験もほとんどなく、三十五歳になるまで仕事と戦争だけで生きてきた筋金入りの仕事人間だった。
「三枝宗一郎。私と来い」
「事情聴取ですか?」
「違う。お前の飯を、もう一度食べたい」
こうして宗一郎は、ひょんなことから女公爵の領地で暮らすことになる。
やがて辺境で小さな食堂を始めた宗一郎のもとには、騎士、魔術師、商人、冒険者、貴族など、一癖も二癖もある客たちが集まり始める。
そしてなぜか女公爵まで毎日のように食堂へ通ってくるのだが――。
「今日も視察だ」
「昨日も視察でしたよね?」
「領地経営とはそういうものだ」
「公爵城から往復三時間かかりますけど?」
四十二歳のおじさんは、まだ気づいていない。
彼女が欲しいのは、料理人ではない。
ましてや異世界の知識でもない。
欲しいのは――彼自身なのだ。
これは、何者にもなれなかったと思っていた普通のおじさんが、異世界で食堂を開き、たくさんの人々の腹と心を満たしながら、人生で初めて本気の恋をする物語。
料理あり、勘違いあり、領地再建あり。
そして、最強なのに恋だけは不器用な女公爵から猛烈に求婚される、少し遅めの異世界恋愛ファンタジーコメディ。
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