私のSK-IIを足に塗った家政婦、今度は「うちのニート息子と結婚して」と言い出した
月四十万円で、住み込みの家政婦を雇った。
それでも給料が安いと不満をこぼしていた彼女は、私が買ったばかりの三万円近いSK-IIを、勝手に自分の足へ塗っていた。しかも現場を見つかっても、悪びれる様子すらなかった。
「化粧水一本くらいでしょ? 顔なんて一つしかないのに、そんな高いの使う必要ある?」
娘のために買ってきた贈答用の佐藤錦も、気づけば半分以上なくなっていた。彼女は指についた果汁を舐め、そのまままた箱へ手を伸ばした。
「こんな高いさくらんぼ、今まで食べたことないんだから。何個か多く食べたっていいじゃない」
高校三年生の娘・七海は、大学受験を控えた大事な時期だった。
ところが高橋さんは、私に隠れて七海へLINEを送り、予備校を休んで早く帰ってこいと言っていた。床を拭かせ、トイレを掃除させ、自分は私のソファに寝転がって果物を食べていた。
それでも私は、母の顔を立てて何度も目をつぶった。
そんな彼女が、ある日、自分の息子を家へ連れてきた。
高橋拓也。
初対面だというのに、彼の目は私と部屋と窓の外の車を順番に眺めていた。人を見るというより、値踏みしているような目だった。
「沙耶さんくらいの条件なら、バツイチで子どもがいても、まあ俺は気にしないかな」
それから何食わぬ顔でリビングを見回した。
「もし結婚するなら、この家は俺名義にしたほうがいいよね。お金の管理も俺がやったほうがいいし。そうだ、ポルシェ買ったんでしょ? あれ、俺が乗ればいいじゃん」
この親子は、図々しいにもほどがある。
その程度にしか思っていなかった。
その夜までは。
二人が私のダイニングで、私を抵抗できない状態にする方法を相談しているのを聞いた。
証拠を握って黙らせること。
預金や家の名義を調べること。
そして、七海のことまで。
ドアの向こうで話を聞きながら、握った指先が冷えていった。
この二人が狙っていたのは、食べ物でも化粧品でも、月四十万円の仕事でもなかった。
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