竜と呪いの千回紀
竜と人は結ばれない。だから竜を殺すしかなかった。
地球にはかつて竜や魔法がある時代が存在した。【静謐】【躍動】【変貌】【解析】【露呈】【編纂】そして【虚無】。七体の竜とそれが統べる七つの時代。その中でただの人間だった俺は、【静謐】と想い合って、いずれ結ばれようと約束をした。
しかし死の呪いに侵されていた俺の肉体はもうもたなかった。そこで転生……記憶を保持したまま生まれ変わって、いずれ結ばれようと、そういう約束を結んだのだ。
うまくいかなかった。
転生後には記憶を保持できなかった。俺は【静謐】の妹たちが統べる時代に生まれ変わり続け、それぞれの人生を生きていくことになる。
竜たちは長姉である【静謐】の目的に協力的だったけれど、それは記憶を失っている俺とは関係がないことだ。俺はそれぞれの時代で大事になったもののために行動し、時に竜と敵対し、時に味方し、竜たちの死を看取っていくことになった。
竜は死にすぎた。
最後の竜である【虚無】は世界を消してやり直すことにした。
世界は人の感情を食べて生きる竜たちのもので、それがうまくいかず、竜が死にすぎた時は消してやり直すことになっていた。
世界がリセットされて、【静謐】は俺のことを『過去の思い出』にしてしまった。記憶はある。でもそれは昔見た映画みたいなもので、当事者意識が薄くなる。
だから今度は、俺の方から告白することにした。
彼女が竜である限り俺たちは結ばれない。だから竜を殺して時代のリセットが起こらないように活動した。幾度も人生を繰り返した中で結ばれた縁にも味方され、俺たちはようやく最後の竜を倒し、時代の繰り返しを止めることに成功する。
そして現代、ようやく俺は、かつての人生を思い出し、隣にいる人が【静謐】が人として転生した姿であることを認識できた。
世界に不思議は消え失せて、今は幸福な現実がここにある。
※カクヨムにも別タイトルで掲載
248,420字 (2760.2字/話) 17%