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伊佐波瑞樹 2026/11/08 公開 2026/11/08 02:26 更新
父を亡くしてから、十六歳の少年ハズキに居場所はなくなった。
義母と異母きょうだいから虐げられ、望まない結婚まで押しつけられた彼にとって、唯一の心の支えは、森の奥にある洞窟だった。
そこには、紫色の水晶に封じられた一人の美しい天使が眠っている。
幼い頃から、嬉しかったことも、悲しかったことも、誰にも言えない苦しみも、ハズキは彼女に語り続けてきた。
返事が返ってきたことは、一度もない。
それでも、彼は話しかけることをやめなかった。
そして、すべてを失いかけた夜。
「……誰か、助けてください……」
その小さな願いに、長い沈黙を破って応えた者がいた。
砕け散る紫の水晶。
現れたのは、白と黒、二色の翼を持つ天使――リュミエラ。
かつて誰よりも人々を愛し、裏切りによってすべてを失い、世界へ「滅びろ」と囁いた存在だった。
圧倒的な力を持ちながら、深い傷と消えない罪を抱える彼女。
そんな天使が、なぜかハズキにだけは、とても優しく微笑んでくれる。
「あなたの声は、ずっと聞こえていたわ」
居場所を失った少年と、世界を憎んだ天使。
二人は、互いの知らない過去と傷を抱えたまま、まだ見ぬ世界へ旅立つ。
出会う人々の優しさも、悪意も、何気ない日常の温かさも、少しずつ二人の心を変えていく。
これは、誰にも必要とされないと思っていた少年が、自分の人生と大切な人を見つけていく物語。
そして――
世界を憎んだ天使が、たった一人の少年とともに、もう一度世界を愛せるようになるまでの、切なくも温かな恋と旅の物語。
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