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SG 2026/07/15 公開 2026/07/16 18:56 更新
才能なんて要らない。今日の飯と、寝床が要るんだ。
大異変で文明が崩れ、荒廃した世界。人々は各地に生まれた「迷宮」から資源を奪い、その日をなんとか生き延びている。
ハルの力は「秤の手」――利き手で触れたものの重さを、軽くも重くもできる。ただし片手分だけ、遠隔操作は不可、生物相手には効きが浅く、使えば手が焼けるように痺れて動かなくなる。腕力や魔力のように測れない、地味で扱いにくい力。ギルドの査定基準にも乗らず、彼はただ「掴み屋」と呼ばれてきた――本来は、ハル個人ではなく、使い道のない半端者すべてに向けられる蔑称だ。
超人的な身体能力など無い、生身の18歳。だが自分を軽くして懐に飛び込み、当たる寸前に重さを取り戻す――その一瞬の切り替えだけを武器に、ハルは迷宮の底でも、理不尽な人間社会でも、なにくそと足掻き続ける。皮肉屋で口は悪いが、困っている奴を見捨てられない性分だけが、彼の数少ない取り柄だった。
けれど、灰塚の奥で拾った小さな縁と、割に合わない依頼の数々が、いつしか「掴み屋」の名を上書きしていく。
蔑称だったその名が、いつか世界に知れ渡る二つ名になるまで。
手のひらひとつで、這い上がれ
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