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小竹X 2026/05/08 公開 2026/05/19 07:03 更新
伯爵令嬢ミリア・ハーシェルは、王太子セドリックの婚約者として五年間、王宮の暮らしを支えてきた。
彼女の加護は《家守》。
暖炉、鍵、寝台、食器、パン窯、井戸、扉――人が暮らす場所に宿る小さな「おうち精霊」と話し、住まいを整える地味な力だ。
王宮ではその力を「家事魔法」と笑われた。
けれどミリアが毎日名前を呼び、手入れをし、居場所を与えてきたからこそ、王宮の朝食は温かく、寝室は清潔で、扉は夜ごと不審者を退けていた。
そんな建国祭の夜、王太子は聖女セリナを隣に置いて告げる。
「君の家事魔法など要らない。婚約を破棄する」
ミリアは静かに礼をした。
「承知しました。では、私個人と雇用契約を結んでいるおうち精霊たちに、退職の意思確認をいたします」
周囲は笑った。
けれど次の瞬間、王宮の暖炉が消え、鍵が眠り、寝台がふかふかをやめ、パン窯がミリアの荷馬車へ乗り込んでしまう。
王宮を出たミリアを迎えたのは、北境から来た辺境伯グレン。
彼は、廃れた砦と寒さに震える兵士たちを救うため、ミリアに頭を下げる。
「あなたの仕事に、正当な報酬を払いたい」
これは、地味な家事魔法と笑われた令嬢が、王宮を捨て、空っぽの砦に温かい食卓と眠れる夜を取り戻し、やがて国の暮らしそのものを救う物語。
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