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原文パパ 2023/02/19 公開 2023/02/19 11:11 更新
私は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならないと決意した。私には政治がわからない。私は、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。しかし邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。今朝未明、私は村を出発し、野を越え山越え、十里離れたこのシラクスの市にやって来た。私には父も母もない。女房もいない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村のある律儀な牧人を、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近かなのである。私は、それゆえ、花嫁の衣装や祝宴のご馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。まず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
私には竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今はこのシラクスの市で石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく会っていなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちに私は、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりではなく、市全体が、やけに寂しい。のんきな私も、だんだん不安になってきた。路で出会った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年前にこの市に来たときは、夜でも皆が歌を歌って、まちは賑やかであったはずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に出会い、今度はもっと、語気を強くして質問した。老爺は答えなかった。私は両手で老爺のからだを揺すぶって質問を重ねた。老爺は、周りをはばかる低い声で、わずかに答えた。
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