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山本田38ページ 2026/10/17 公開 2026/10/20 17:00 更新
数万年前、滅びゆく旧地球で肉体を捨て、巨大な人工知能天体「マザー・スフィア」の一部となった元人間アルケー-704。飢えも病も死もない純粋思考の海で生きる彼は、辺境の観測者として、星図に存在しないはずの惑星の裂け目を捉え、現地の素材で肉体を作る「堕天」を敢行する。
降り立ったのは、石の城壁と騎士と魔導士が暮らす、中世ヨーロッパ風の世界。しかし彼の目には、魔法は音声コマンドとナノマシンの挙動に、魔物は暴走した防衛ドローンに見えていた。観察に徹するはずだったアルケーは、寒さに凍え、刃物で指を切り、見知らぬ少年に分けてもらったパンの味に動揺する。
「アルク」と名乗った彼を拾ったのは、病の母を抱える薬師見習いの少女リーナ。村を襲う魔物の群れを前に、アルクは力を使えば自分の座標が宇宙に露見すると知りながら、思わず一歩を踏み出す。その瞬間から彼は「伝説の大賢者」と呼ばれ、王都の大司教に招かれ、そして気づく。この星が全宇宙から隠された理由と、魔力枯れ病の正体は、彼の降下より前からすでに動いていた。
全知の神として何も失わなかった男は、有限の命を持つ人々の傍らで、初めて「失う」ことを知っていく。
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