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エレシー 2026/05/07 公開 2026/06/03 18:36 更新
「もはや、貴様のような穀潰しに割く予算などない」
豪華に飾られた応接室の入り口。座ることさえ勧めない夫、ラハルト・ライセンは残酷なまでに冷ややかに言葉を継いだ。
ユフィネルがライセン家に嫁いでから、はや二年。長引く戦争の影響で貴族の間では早婚が流行しており、ユフィネルもまた十六歳の誕生日を迎えるやいなや、ライセン家へと嫁ぐことになった。
この二年間、ユフィネルはライセン侯爵夫人としての最小限の義務すら果たさぬまま歳月を過ごしてきた。当然のことだった。
侯爵とはいえ、ラハルトは王国軍の首脳であり、領地経営とは無縁だ。しかし、次男のロウェル・ライセンは金を使うことしか能のない愚か者で、大夫人もまた経営には疎かった。
ただでさえ長引く戦火により、領民たちの暮らしは疲弊していた。最小限の黒字でも出さなければ領民たちが立ち行かなくなる。そう分かっていたからこそ、ユフィネルは必死に領地経営だけに打ち込むしかなかったのだ。
ユフィネルにとって侯爵夫人としての社交や奉仕などは遠い夢物語であり、一年に一度帰宅するかどうかの夫とは、子供を作ることすら叶わなかった。
誰かがユフィネルの業務を代わってくれるというのなら、喜んで譲り渡しただろう。
たとえエイミー・ハレンドがロウェル・ライセンと恋仲であったとしても。
大夫人がロウェル・ライセンに家督を継がせようと策を巡らせていたとしても。
そのすべてを、ユフィネルが独りで食い止めていたのだとしても。
冷徹な眼差しを向ける夫、ラハルトに対し、ユフィネルは眩いばかりの微笑みを浮かべて挨拶を返した。
「これまでありがとうございました、ライセン侯爵。どうか、お健やかに」
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