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てへろっぱ 2026/10/07 公開 2026/10/08 21:12 更新
国境町で修理屋を営むオルヴェン・ラグには、六年間、一度も顔を見たことのない弟子がいる。
古い魔導具《分かち帳》の向こうにいる相手。
名前も住所も知らない彼女を、オルヴェンは「すずめ」と呼んでいた。
灯火ひとつ満足に扱えなかったすずめの魔法陣へ赤を入れ、失敗の原因を教え、ときには叱りながら六年。
やがて彼女から、念願の職に就いたという報告が届く。
オルヴェンも素直に喜んだ。
――就職先を読むまでは。
『ヴァルゼン帝国、宮廷魔術院です。第三席を拝命しました』
「……先に言えよ」
オルヴェンの暮らすラーディス王国と、ヴァルゼン帝国は敵対国だった。
しかも国では、敵国への術式や魔導技術の流出が禁じられている。
知らなかったとはいえ、六年間も敵国の魔術師を育ててしまった。
さらに悪いことに、すずめが着任早々任された水防結界は、国境を流れる川に設置されるという。
その設計図には、オルヴェン自身が添削した術式が使われていた。
そして施工上の変更によって結界が暴走。
敵国側だけでなく、オルヴェンの町まで水害に巻き込まれてしまう。
顔も知らない師匠と弟子。
川を挟んだ敵国同士。
それでも二人は一冊の帳面を通じて協力し、両国の人々を救う。
事件のあと、オルヴェンは初めて知る。
弟子「すずめ」の本名は、イェスカ・ローディン。
二十三歳にして二百人を救い、帝国宮廷魔術院第三席へ抜擢された天才結界術師だった。
そして翌日。
六年間一度も会ったことのない弟子本人が、国境を越えて師匠に会いに来る。
彼女が持ってくるのは、帝国宮廷の禁庫から見つかった二十七年前の術式。
そこには、オルヴェンしか知らないはずの修正法と――彼の父と同じ「ラグ」という署名が残されていた。
敵国の天才宮廷魔術師を育ててしまった町の修理屋と、師匠の正体を知らずに育った弟子。
一冊の帳面から始まる、魔法技術と国境を巡る師弟ファンタジー。
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