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朝霧ナギ 2026/11/01 公開 2026/11/01 12:09 更新
「新たなる、魔王陛下」
勤続十年。昇進前の、三週間あまりの長い休み。
システム運用の会社員・篠原湊は、奥秩父のいつものキャンプ場で焚き火を眺めているうちに、うとうとと眠ってしまった。
目を覚ますと、そこは二つの月が浮かぶ知らない森だった。
冒険者の声を避けて奥へ、さらに奥へ。
見つけたのは、川の音しかしない、最高のサイト。――そこが魔族の聖地「静寂の谷」だとは知らずに、テントを張り、焚き火をし、コーヒーを淹れただけなのに。
「ここ、俺のサイトなんで」は聖域の宣言に。
「もう少し、静かにしてもらえると助かるんですが」で、千の魔族がいっせいに声を潜め。
「撤収するまでがキャンプです」は、魔王軍の軍規になった。
討伐に来た勇者は瘴気で倒れて介抱され、宰相を名乗る夜魔族の令嬢は、彼を「陛下」と呼んでひざまずく。
減っていく醤油と、背負える分だけのギア。
本人はただ、誰からも呼ばれない場所で、静かにソロキャンプがしたいだけなのに。
勘違い×ソロキャンプ×キャンプ飯。焚き火の前の、ちょっとずれた魔王の三週間。
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