ハイファンタジー 連載中・全7話

星屑の値段

tm 2026/10/25 公開 2026/10/30 23:59 更新

あらすじ

むかし、空には島があった。

 百二十七年前の夏の昼、空が鳴り、白い光が走った。光が上から来たのか、下から行ったのか、見ていた者は誰も言えなかった。のちには、誰も言わなくなった。島々は七日かけて砕け落ち、都が三つ地図から消えた。人々はこれを大崩落と呼び、その年を元年とした。

 落ちた欠片は、光る石を残した。星屑である。星屑は温かく、何年たっても冷めない。子どもたちは「息をしている」と言う。

 人々は星屑の粉で紋を刻み、火を灯し、傷を塞ぐ術――詠紋を覚えた。最もよく効くのは、生きた体に刻んだ紋だ。そして刻んだところから、体は石になっていく。星蝕と呼ばれるこの病に、治す方法はない。強い術者ほど長く生きられない。それが、この大陸の魔法の値段である。

 星屑をどう呼ぶかで、大陸は割れた。聖王国ヴェルディナは聖遺と呼んで台帳に記し、白い手袋の大司祭が教会を統べる。自由都市カルネイアは値札と呼んで売り買いし、エルフは森の傷と呼んで忌む。ドワーフは山の腹で掘り続け、獣人の牙連は持たずに生きる。北の魔族の国ノクトゥルナでは、記録官がすべてを書き留めている。百二十七年前のあの日のことも。

 大崩落暦百二十七年。星屑は尽きかけ、星蝕の病者は増え続けている。そして大陸のあちこちで、奇妙な記録が見つかりはじめている。誰の様式でもない紋。台帳から消えた十七年分の数字。古老の沈黙。

 聖遷祭の前夜、王都の聖遺管理局で、箱車に三つの箱が積まれた。二つは台帳に載った星屑。残る一つは、どこにも名のない、古びた黒い匣だった。蓋の紋は、外縁の線が途切れて閉じていなかった。まるで、どこか遠くへ繋がろうとしているかのように。

 明日、その箱車は祭りの雑踏を進み、ひとりの少年が、盗んではいけないものを盗むことになる。

 ――これは、星屑の値段を誰が払うのかを、決め直そうとした者たちの物語である。

ポイント

総合ポイント 0
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 00% ブクマ×2 0100%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

ブクマ
0
感想
0
レビュー
0
評価者数
0
平均評価
[未取得]
週間読者
0

ブクマと評価ポイントの推移

10/26〜10/30(5日間)
ブクマ 0+0(5日間)
1 0 10/26 10/28 10/30
評価ポイント 0+0(5日間)
1 0 10/26 10/28 10/30

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
10/30 0 ±0 0 ±0
10/29 0 ±0 0 ±0
10/28 0 ±0 0 ±0
10/27 0 ±0 0 ±0
10/26 0 ±0 0 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

順位を読み込んでいます…