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Jint 2026/10/17 公開 2026/10/31 07:10 更新
心臓に、契約が刻まれていた。
前世の俺は、災害復興NPOの職員だった。泥を掻き、物資を運び、制度の壁に殴られ続けて――過労で死んだ。
転生先は、やり込んだRPG『レガリア・オブ・ルーン』の中ボス。王国の奪取を企む悪役貴族「簒奪公ヴァイス」。原作では中盤の山場で勇者に討たれ、一族郎党が連座処刑される、絵に描いたような悪の中間管理職だ。
この世界の人類は、周期的に土地ごと呑まれる災厄「蝕」に見舞われている。勇者は各地の蝕を鎮めるために今日も駆け回っている。立派なことだ。心から応援したい。
だが俺は、原作の裏設定を知っている。
王家が代々執り行う「鎮めの儀」の正体――あれは蝕を鎮める儀式じゃない。王都に来るはずの蝕を、辺境へ「逸らす」装置だ。勇者の奮闘は永遠に終わらない対症療法で、五年後、逸らされた蝕は俺の領地を呑む。根本解決の方法はただひとつ。王座を奪い、玉座の間の儀式核を叩き壊すこと。
つまり――王国簒奪。原作のヴァイスの目的、まさかの大正解だった。
問題は、俺の心臓に刻まれた「簒奪の誓約」だ。王座への野心を公言し続けなければ死ぬ。おまけに、自分の行動を「善意」と説明した瞬間、心臓が締まる。
だから俺は、被災地を救うときもこう言うしかない。
「この村は俺が征服した! 復興させるのは、将来搾り取るためだ!」
勇者に回復薬を送るときも、こうだ。
「お前を殺すのは俺だ。それまで勝手に死ぬな」
違う、そうじゃない。そうじゃないんだが、そうとしか言えないんだ。
切り札の魔人化は、使うたびに体の一部を持っていかれる。抉れた場所には、俺の「壊れ方」を世界で一番愛でている錬金術師が、嬉々として義肢を接いでくる。
これは、善人になれない男が、悪役の口上だけで人類を救ってみせる物語である。
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