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ふたーなる 2026/10/16 公開 2026/10/16 00:03 更新
# 婚約破棄代行
「グラシエル殿下。依頼人であるエレノーラ・ヴェルネ様は、あなたとの婚約を解消する意思を固められました」
ある日、王子グラシエルのもとに、一人の女性が訪れた。
彼女は婚約破棄代行業者の担当者だった。
婚約者であるエレノーラは、長年にわたって王子のわがままに振り回されてきた。約束を破られ、理不尽な要求をされ、それでも王族との婚約という立場上、自分から関係を終わらせることができなかったのだ。
そこで彼女が利用したのが、婚約破棄代行という新サービスだった。
婚約破棄の通告から、贈答品の返還、両家間の契約の清算まで、面倒な手続きはすべて業者にお任せ。依頼人は相手と直接話す必要すらない。
「ふざけるな! 私は王子だぞ! 本人を連れてこい!」
「申し訳ございません。依頼人は殿下との直接の交渉を希望されておりません」
こうして、エレノーラとグラシエルの婚約破棄は、本人同士が顔を合わせることなく始まった。
納得できない王子は、エレノーラの屋敷に押しかけ、代行業者の事務所に乗り込む。しかし、返ってくるのは「今後のご連絡は弊社を通じてお願いいたします」という事務的な返答ばかり。
さらに、婚約に伴う贈答品や契約の清算が始まり、王子は今までエレノーラに任せきりだった面倒な手続きを、自分で処理しなければならなくなる。
ついには両親からも、婚約者の意思を尊重するようにと釘を刺されてしまった。
「どうして、誰も私の言うことを聞かないのだ!」
今まで自分の思いどおりになるのが当然だと思っていた王子は、ようやく気づき始める。
自分がどれほど周囲に甘え、婚約者に負担を押しつけてきたのかを。
一方、すべての手続きを代行業者に任せたエレノーラは、ようやく自由な生活を手に入れていた。
これは、婚約破棄を言い出せなかった令嬢が、プロの力を借りて厄介な婚約を終わらせる物語。
そして、自分から婚約を破棄したわけでもないのに、婚約破棄の手続きに振り回されることになった王子の物語である。
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