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衣太 2023/03/13 公開 2023/04/02 10:00 更新
その世界に、料理はなかった。
飽食の世界で生まれ育った者は、料理のない世界が想像出来るだろうか?
しかし、歴史において料理が消滅したケースは幾度となく存在する。
それは、ありとあらゆる食材が消滅した時だ。
その世界もそうだった。しかし歴史と違うことがあるとすれば、神がその状況を打破するため『芋』という万能食材を生み出してしまったことである。
その『芋』は土に埋めれば1週間で食べられ、生で食べても消化に難はなく、果物のような甘さがある。そして火を入れれば塩味を産み、主菜が要らなくなるほどに旨く、飽きが来ない。栄養バランスを考える必要すらない、まさに神が作りし食材であった。
そんな世界で『芋』と格闘する、一人の男が居た。男はこの世界に生まれ育った人間ではなく、こことは違う異世界――日本で生まれ育った料理人だった。
彼には、転生する条件として神から一つの使命が授けられていた。
それは、その世界で料理を広めることだ。
料理という概念の消滅したその世界には農耕や畜産の概念はなく、当然調味料すら存在しない。それでも男は料理のため、ろくな調理器具もない世界で芋を、野草を、野生動物を喰らい、少しずつ世界の解像度を高め、料理を広めていく。
美味しいと思える食材を見つけても、ここは食事イコール芋の世界。
当然、必要のないものを食べてもらうことは出来ないし、食に関する一次産業が破綻している世界で料理を広めるのは、食材の供給量からして困難だ。
それでも、男は諦めない。
森の主である巨大狼や家出をしてきた兄妹、風変わりな薬師を仲間に入れ、少しずつ料理という概念を世界に刻んでいく。
誰もが食べて美味しいと思えて、更に真似したくなるものを、男は果たして作れるのか。
異世界料理人VS誰が何しても旨い芋、バトルスタート!
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