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亀丸物産 2026/10/08 公開 2026/10/30 16:10 更新
女神の手違いで、魔王が既に討伐された後の異世界に送られてしまった相良悠人、二十六歳。
勇者としての役目は、もはやどこにもない。
それでも、戦争で焼け野原になった景色を前に、悠人の中に湧き上がったのは絶望ではなく、ただの好奇心だった。
「こんなに面白い場所があるなんて、もったいない」
チート能力も、無双の剣技もない。授かったのは、言葉が通じる加護と、少しだけ丈夫になった体だけ。
悠人の武器は、異世界の人たちが当たり前だと思っているものを、外から来た自分だからこそ「価値あるもの」として見つけられることだった。
一杯の漁師鍋。一つの温泉。一切れのパイ。一杯の地酒。一枚のピザ。一匙の雪乳。一椀の黒鍋。
小さな発見を積み重ねながら、悠人は、不器用で面倒見のいい元冒険者のリゼット、地図職人のフィン、行商人のバロックたちと共に、焼け跡の世界に、少しずつ「観光」という名の灯りをともしていく。
けれど観光は、時に人々の心の傷に触れ、時に新しい問題を生み、簡単には受け入れてもらえない。
息子を失った漁師、傷ついた元兵士、人間を許せないエルフの長老、誇りを守りたい鍛冶師、水を巡って争う砂漠の民、そして、人間と長く敵対してきた魔族たち。
それぞれの痛みに向き合いながら、悠人の旅は、世界を静かに繋いでいく。
その旅路の途中、悠人の優しさに心を寄せる人たちも、少しずつ増えていく。
当の本人だけが、それに気づかないまま。
これは、世界を救う物語ではない。
勇者たちに救われたはずの世界で、人々がもう一度、生きる楽しさを見つけていく物語。
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