ローファンタジー 連載中・全51話

半対の天使

薙叢雲剣 2024/09/06 公開 2024/10/12 22:00 更新

あらすじ

 普通。その言葉が似合う人生を送ってきた。後悔がないと言えば嘘になる。しかし、それが自分の人生だと思うと、なんだか納得してしまう。
 私は皆が思い浮かべるであろう普通の人生を送り、今サラリーマンとして東京と言う都市を動き回っている。そんなある日、私はステージ4の癌だと宣告された。人生に不満は無かった。私よりも不幸な人生を送る人間なんて十億と居る。まだ、食えているだけマシだ。そんな事は駅前のホームレスを見る度にそう思えた。それでも、何か心に引っ掛かる。こうして病室で一人寂しく寝ているが見舞いに来る人なんて居なかった。私には妻子が居ないが為に、お金は腐るほどある。それこそ余命の時間は個室の病室を借りて、それでも余るぐらいには。

「何の為にお金を、仕事をしてきたのだろう」

 お金をいくら稼いでも使う事は無かった。仕事をいくらしても心からの満足は得られなかった。そして唯一残せるお金も相続する先が居ない。
 別に私が特別不幸なわけでは無い。そんな事は社会にでれば耳にタコができるほど聞く言葉だ。そんな事は言われなくても分かっている。世界で一番上になる事はとても難しいが、一番下になる事も同様に難しい。故に、私より下の人間なんて腐るほどいる。そんな事は分かっている。分かってはいるのだ。
 静かな病室をギョロリと睨む。その掛布団から出た細く枯れ枝のような腕は見るに堪えない。首を傾けると横に置いてあった鏡に自分の姿が映る。中年とはいえ未だふさふさに生えそろっていた髪の毛が抜け落ちている自分の姿が映る。

「…」

 私よりも不幸な人間は山ほどいる。それな事は社会にでれば耳にタコができるほど聞く言葉だ。でもそれは、なんの救いにもならない。私より不幸な人間が居たって私には何の救いにもならない。

「一体私の人生は何だったんだろうか」

 何も残せなかった人生。何も成せなかった人生。ただ、生きただけの人生。それは本当に生きているのだろうか?それは単純に死んでいないだけではないのか?
 普通。その言葉が似合う人生を送ってきた。後悔がないと言えば嘘になる。しかし、それが自分の人生だと思うと、なんだか納得してしまう。でも、もしも、もしも次が在れば私は今度こそ生きてみよう。まだ見ぬ世界を旅して。大切な人と出会って。そして、後悔しない人生を、死んでいない人生を歩んでみよう。その日、私は、死んだ。

ポイント

総合ポイント 44
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 3068.2% ブクマ×2 1431.8%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

ブクマ
7
感想
1
レビュー
0
評価者数
3
平均評価
10.00
週間読者
0

ブクマと評価ポイントの推移

10/30〜11/05(7日間)
ブクマ 7+0(7日間)
8 7 6 10/30 11/02 11/05
評価ポイント 30+0(7日間)
31 30 29 10/30 11/02 11/05

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
11/05 7 ±0 30 ±0
11/04 7 ±0 30 ±0
11/03 7 ±0 30 ±0
11/02 7 ±0 30 ±0
11/01 7 ±0 30 ±0
10/31 7 ±0 30 ±0
10/30 7 ±0 30 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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