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黒崎 迅 2026/06/09 公開 2026/06/11 06:08 更新
35歳の戦略家だった男は、気づくと異世界に転生していた。貴族の家の一人息子として。しかし、与えられたスキルは『死のタイマー』――他人の残り寿命が見えるだけの、戦闘ではまったく役に立たないハズレ能力。
周囲は笑った。「お前は無能だ」と。
しかし、彼は気づいている。このタイマーは、人の命だけじゃない。組織の寿命も、陰謀の期限も、国が崩壊するカウントダウンも、すべて見える。
彼は領主である父のタイマーを見た。残りは「3日」。毒を特定し、解毒させる。タイマーは「1年」に伸びた。――タイマーは変えられる。それが彼の最初の教訓だった。
その夜、暗殺者たちが襲撃した。六人の影。彼は逃げ、隠れ、待った。一人のタイマーが「0秒」を示した瞬間、その男は足を滑らせて転落した。別の男のタイマーが「10秒」を刻む間、彼はただ待ち続けた。小さな地震が起こり、荷車が崩れ、三人が同時に死んだ。
彼は手を汚さなかった。タイマーがすべてを教えてくれた。
領主の座を継いだ彼は、まず側近たちのタイマーを読み上げた。「お前はあと六年と二ヶ月。お前は二年と八日。お前は二十年」。居並ぶ家臣たちは震え上がり、膝をついた。
彼は笑わなかった。ただ、冷たく言い放つ。「価値を示せ――命を延ばしてやる。裏切れば、縮める」
これは、たった一つのハズレ技能で、廃れた領地を再建し、やがて国を裏から支配するに至った、一人の元戦略家の記録である。
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