純文学 完結・全10話

折り目は水に沈む

時任 理人 2025/09/16 公開 2025/09/20 15:26 更新

あらすじ

 佐伯美沙、高校二年生。外から見れば目立たぬ、ごく普通の女子生徒。しかし彼女の日常は、常に「観察」と「確認」で満ちている。
 朝のサイレンの回数、トーストを噛む平均回数、教室の余白に引いた鉛筆の線の太さ。美沙にとって世界は常に「データ」と「仮説」で組み立てられる。

 彼女の居場所は、放課後の理科準備室だ。乾燥器から取り出したフィルムの波形を記録し、表面張力の歪みを測り、光の角度で時間を知る。誰にも理解されないその細やかな作業は、美沙にとって「安心」と「存在証明」であった。
 ノートの片隅に彼女は小さな折り目をつける。浅い折り目は戻る。けれど折られた紙は決して元通りにはならない。その事実は、美沙に奇妙な安堵を与える。

 川沿いの帰路で彼女は思う——「表面は拒絶ではなく猶予」。水滴が落ちるまでの時間、音が反響するまでの遅延、確認の繰り返し。日常はすべて実験の延長だった。
 夜、ノートに重ねた線は微妙にずれ、完全には一致しない。その揺らぎを「生の証拠」として受け入れ、彼女は眠りに落ちる。

 まだ何も壊れてはいない。ただ、ひとつの折り目が静かに刻まれただけ。やがてそれが、重い扉を音もなく開く蝶番になることを、美沙自身はまだ知らない。

ポイント

総合ポイント 26
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 2076.9% ブクマ×2 623.1%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

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ブクマと評価ポイントの推移

10/28〜11/03(7日間)
ブクマ 3+0(7日間)
4 3 2 10/28 10/31 11/03
評価ポイント 20+0(7日間)
21 20 19 10/28 10/31 11/03

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
11/03 3 ±0 20 ±0
11/02 3 ±0 20 ±0
11/01 3 ±0 20 ±0
10/31 3 ±0 20 ±0
10/30 3 ±0 20 ±0
10/29 3 ±0 20 ±0
10/28 3 ±0 20 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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