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今井 幻 2026/05/07 公開 2026/05/24 22:00 更新
「——お前は、この国にとって害悪だ」
卒業舞踏会の大広間で、王太子リオンに公開断罪された公爵令嬢エレノア。
彼女は五年間、王太子の名の下に南部同盟との外交交渉の草案を書き、疫病対策の法案を起草し、国庫の帳簿を一人で管理してきた。功績はすべてリオンのものとして奪われ、代わりに王太子の隣を手にしたのは、転入わずか一年で計算し尽くされた涙を武器にのし上がった男爵令嬢リリアーナだった。
婚約破棄の翌日、父はエレノアを物置同然の離れに追いやり、母の形見の白百合の花壇はリリアーナの好みの薔薇に植え替えられる。社交界からも締め出され、居場所を完全に失ったエレノア。
けれど、左手の甲に幼い頃から浮かんでいた金の紋様が光を放ち始めたとき、すべてが動き出す。
離れの暖炉の奥に隠されていた母の秘密の書斎。そこに遺された一通の手紙には、母がヴェルザンド帝国の古代魔導師の血を引く者であること、そしてエレノアが千年に一度の「契約の継承者」であることが記されていた。
『帝国があなたの味方になります』
折しも届いた帝国皇帝カイからの招待状にはこうあった。
『貴女の母君との約束を果たしに参ります』
——「死神」の異名を持つ大陸最強の皇帝。母の追伸には「本当はとても優しい子です。昔はよく泣いていました」と書かれていた。
守るべきものを全て奪われた令嬢は、自分の足で帝国への一歩を踏み出す。
一方、エレノアという「国の土台」を失った王国では、外交交渉の決裂、帳簿の解読不能、偽聖女の不正が次々と露呈し始め——今さら「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、もう遅い。
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