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駄才乃 2025/09/09 公開 2025/09/09 19:11 更新
人生には、すべてを明らかにしないほうがよい真実がある。そして時には、その曖昧さによって、逆に救われ、守られるものも多い―。
『annual event』は、愛と「曖昧さの中に守られる家族の形」の絆を描いた物語である。
主人公・広瀬啓介は、かつて女遊びを繰り返す刹那的な青年だった。だが、美来(みらい)という女性と出会い、初めて本当に愛する存在を得たことで、それまでの無軌道な生活を見直し、人間として成長していく。その美来と出会うまで、啓介を唯一許し続けた女性・沙良は、美来との出会いを契機として啓介から別れを切り出される。そして、沙良は啓介とは真逆なタイプ、堅実な男性・亮と結婚するが、心の奥底には消えない痛みを抱え続けた。
沙良は結局啓介によく似た別の男性と不倫関係となり、その子ども―詩織―を宿してしまう。啓介に自殺までほのめかす沙良。沙良とその子どもを守る為の啓介と沙良の誓いの始まりとなった。
年に一度の誕生日会。高級レストランで交わされる啓介から詩織へのプレゼントと笑顔。それは誰にも明かせない、しかし確かに存在するもう一つの家族の儀式だった。やがて詩織は、実の父ではない啓介を「本当のパパ」だと信じ、彼に憧れ、成長していく。しかしDNA鑑定によって血の繋がりが否定された瞬間、彼女の夢は打ち砕かれる。それでも啓介は言う——「血縁を越える本当の絆がある」と。
本作の核にあるのは、「曖昧さの価値」である。すべてを白黒はっきりさせることが正しいとは限らない。むしろ“言わないこと”“秘めること”によって、かえって壊さずに済むものがある。啓介・沙良・亮・詩織という四人は、真実を完全に共有せずとも、それぞれの立場を守り合いながら、一つの家族として歩み続ける。
人は何を曖昧にして、何を本当に守るべきか―。
愛と曖昧さ、そして本当の絆の物語『annual event』は、読者にその答えを静かに問いかけてくる。
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