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水前寺鯉太郎 2026/04/10 公開 2026/05/17 11:46 更新
知能は、パンのように膨らみ、そして静かに萎んでいった。
ガイ・グレーム・クロイドン、35歳。
パン屋で働く彼の知能は、6歳で止まっていた。
周りから冷たい言葉を投げかけられても、その意味がわからないガイは、いつも「へらへら」と笑ってパンをこねていた。パンの焼ける匂いと、店主の笑顔があれば、世界はそれだけで幸せだったから。
そんなある日、ガイは新開発の「知能向上薬」の被験者に選ばれる。
薬の効果は劇的だった。
昨日まで書けなかった文字が書けるようになり、わからなかった悪意が理解できるようになり、彼はやがて「天才」の領域へと至る。
しかし、その輝きには残酷な代償があった。
知能の向上は一時的なもの。ピークを過ぎれば、知能は以前よりもさらに低い場所まで転落し、深い闇へと落ちていく。
これは、一人の青年が「自分」を獲得し、そして「自分」を失っていくまでの日々を綴った、ひらがなだらけの、けれど誰よりも切実な日記の記録。
「あたまが よくなったら、みんな しあわせに なれると おもっていたんだ」
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