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ちょこだいふく 2025/08/25 公開 2026/03/09 20:00 更新
白い天井。
点滴の管が細い腕に繋がり、規則正しく機械が心音を刻んでいた。
小夜は、枕元に積まれた本のひとつを開きながら、そっと笑みを浮かべていた。
ページの挿絵には、江戸の町並みが描かれている。
木造の家々、路地を流れる水、軒先で笑い合う人々。
「……いいなぁ。こういう暮らし」
声は弱々しいが、目はきらきらと輝いていた。
病室の外では雪が降っている。冷たさを思わせる白銀の光景の中、
小夜の胸には不思議なあたたかさが広がっていた。
彼女は生まれつき体が弱かった。
走ることも、思いきり外で遊ぶこともできなかった。
でも、代わりに心の中ではいつだって冒険をしていた。
アニメや小説、歴史の本を通して、知らない時代や世界を旅していたのだ。
とくに惹かれたのは江戸。
「銭湯」「上下水道」「祭り」――。
庶民が肩を寄せ合い、笑いながら暮らす姿に、自分もそこに混じりたいと心から願った。
「もし……」
弱い声で呟く。
「もし、次に生まれ変われるなら……わたしも、ああいう世界で……」
ーーーー
「……っ!」
次の瞬間、肺が大きく膨らみ、のどから声が溢れ出す。
「おぎゃぁぁぁ!」
響く産声。
小夜――いや、新たに生まれた「私」は、両手両足をばたつかせながら、強く、生を告げていた。
「……元気な子ですよ」
「ほら、ご覧になって」
優しい声。抱き上げられると、見下ろすのは涙を浮かべた美しい女性。
彼女はそっと頬を寄せて、囁いた。
「……ようこそ、コルネリア。私たちの愛しい娘」
父の腕は逞しく、誇らしげで。
兄と姉は興味津々に覗き込み、「妹だ!」と笑っていた。
胸が熱くなり、涙がにじむ。
「わぁ……生きてる……! 息ができる……! 体が動く……!」
心の中で何度も叫ぶ。
「……私、今度こそ幸せに生きるんだ」
江戸文化に憧れるコリィの物語です!
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