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日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。
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花守かおるこ 2026/05/15 公開 2026/09/02 13:09 更新
夫が愛人のもとへ消えた朝、
私は泣かなかった。
湯気の消えかけた味噌汁を見つめながら、
ただ静かに、鍵屋へ電話をかけた。
三十五年。
私は、何も知らない妻ではなかった。
帰宅時間のずれも、
香水の匂いも、
減っていく預金も、
見栄だけ大きくなっていく背中も。
全部、知っていた。
だけど私は叫ばなかった。
責めなかった。
取り乱さなかった。
その代わりに、
通帳を整理し、
名義を変え、
記録を残し、
静かに今日を待っていた。
夫は言った。
「俺には若い女がいる」
私は答えた。
「そう」
それだけだった。
夕暮れ。
閉め出された扉の向こうで、
夫は怒鳴り声を上げる。
けれど私は、
もう震えていなかった。
鍵を替えたのは、
家のためじゃない。
人生の鍵を、
取り戻すためだった。
誰かの機嫌で生きる日々を終わらせ、
誰かに怯える夜を終わらせ、
ようやく私は、
私の人生の扉を開けたのだ。
カチリ。
小さな鍵の音は、
長い長い結婚生活の終わりであり、
静かな再出発の音だった。
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