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姫野ことは(旧名:KOTOHA) 2026/09/13 公開 2026/09/13 07:20 更新
「娘の婚約を、破棄していただきたく参りました」
王太子との婚礼を半年後に控えた侯爵令嬢エマ。
ところがある日、三十四歳の母が王城で突然、娘の婚約破棄を申し出た。
理由は――。
「娘が、邪魔になりました」
しかも母は、娘の代わりに自分が王太子妃になるという。
それから、母の不可解な行動が始まった。
娘が十年間学び続けた本を運び出し、馬車を売り、銀食器を売り、亡き夫の形見まで手放していく。
その一方で――。
家族三人を描いた、たった一枚の肖像画だけは売ろうとしなかった。
「あなたが持っていなさい」
そして母は言った。
「私はもう、この家の人間じゃなくなるから」
――なぜ?
なぜ母は、そこまでして娘の婚約者を奪おうとしているのか。
なぜ、すべてを捨てようとしているのに、家族の肖像画だけは娘に残したのか。
一か月後。
母は三通の書類を手に、再び王城へ現れる。
教育費の返済。
侯爵位の譲渡。
そして――王太子との婚姻の申し立て。
すべての行動がひとつにつながったとき。
「娘が邪魔になった」
その言葉の、本当の意味が明らかになる。
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