推理 短編

裏切りの代償

ゆちこんす。 2026/11/03 公開 2026/11/03 09:50 更新

あらすじ

父は毎日、夕方の五時に同じ言葉を繰り返す。
「柳田を、俺が殺した」

認知症の作話。医者はそう言った。聞き流してあげてください、と。

けれど母の三回忌の準備で、紗英は裁縫箱の二重底から古い缶を見つける。
片方だけの赤い手袋。四十一年前の新聞記事。昭和六十年の家計簿。

柳田という男は、実在した。階段も、雪の夜も。

父には夜勤というアリバイがある。ならば、父が庇っているのは誰なのか。
毎年二月九日に、母が洗い続けた娘の手。その意味に気づいたとき、紗英は答えにたどり着いたつもりでいた。

三回忌の日、見知らぬ老人が玄関のチャイムを鳴らす。
「半分、当たっています」

法を裏切った者。真実を裏切った者。記憶に嘘を刻んだ者。
全員が払った、四十一年分の代償の話。

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