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ramune 2026/10/24 公開 2026/10/24 15:10 更新
「剣聖様、私を弟子にしてください!」
お見合いの席で、向かいの女性が椅子を引いた。断られるのかと思ったら、彼女はその場で膝をついた。
俺はバルドゥル、四十二歳、独身。辺境の巡業を十二年やって、ようやく誰かと同じ食卓で年を取りたくなった。だから婚活を始めた。けれど紹介される相手は、なぜか毎回、婚姻届より先に入門願いを差し出してくる。
剣の腕なら保証する。家では朝寝坊するし、贈り物の趣味は悪い。それでも――
「先生ではなく、夫を探している方はいませんか?」
広間が静まり返った。手を挙げる者は、一人もいない。
婚活を取り仕切る三十五歳の仲人だけが、俺の履歴書から「剣聖」の二文字を消した。
「先生が欲しい方と、夫が欲しい方は、分けて探しましょう」
ところが見合いで会った人々は、断っても家へやって来る。店を守りたい未亡人、親の縁談を断りたい令嬢、剣が好きだと家に言えない少年。教えるだけでは済まなくなり、俺の小さな家が稽古場になった。
ひとりの願いを叶えるたびに、嫁候補は一人減り、食卓の皿が一枚増える。
そんな俺に、仲人だけは弟子入りを求めない。誰も知らないはずの朝寝坊まで、なぜ知っているのだろう。
妻を探しに来たはずが、弟子ばかりが増えていく。
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