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源三郎 2026/11/02 公開 2026/11/02 23:52 更新
指を横に払うだけで、人が消える。
肉体も、声も、帰りを待つ家族の記憶も。世界は何事もなかったように帳尻を合わせる。
神坂仁――通称ゼロ。世界OSに仕える、消去専門の掃除屋。
昼は路地裏で、忘れたい痛みを預かる「なんでも屋」。夜は命令ひとつで、誰かを世界から消してきた。
ある雨の夜。仁は、消去対象の少女と出会う。
「あなたには、わたしを消せない」
指先を弾いたのは、見たことのない赤い表示だった。
《READ-ONLY》
消せない少女、リア。
彼女は三十六年前の世界を知っていた。仁が忘れたはずの名前も。割れた卵の味も。
少女を消そうとする管理者。記憶を奪い、悲しみごと人を黙らせる街。逃げるほど、仁の中には、かつて消した者たちの声が積もっていく。
消すために使ってきた指で、誰かを残せるのか。
「世界がお前をバグだと言うなら」
仁は、雨の中で少女の手を掴む。
「俺が、この世界のほうを間違いにする」
消された名前を取り戻すために。
ひとりの少女を、もう二度と“礎”にしないために。
これは、人を消してきた男が、世界に残された痛みを拾い直す物語。
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