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Hamin 2026/11/02 公開 2026/11/02 20:27 更新
渋谷の美術館で、顔も名前も出さずに個展をひらく少女がいる。
アカウント名は「NOBODY(ノーバディ)」。投稿すれば10万いいね。
けれど、目黒の団地に住む高校2年生・高瀬美空の胸は、数字が増えるほど静かになっていく。手描きでもAIでも描ける彼女にとって、絵はいつのまにか「♡を集める道具」になりかけていた。手作りの学生証で東大生になりすまし、ついにはAIに、いいねの数まで偽らせて――。
ある夜、スケッチブックに、描いた覚えのない絵が現れる。雪の戦場。古い鐘楼。星に届きそうで届かない、二本の手。そしてページの隅には、自分の字で『70』。
それは、異世界で止まったままの「70秒」だった。蒸気と飛行船の空の下、赤と青の国が撃ち合う戦場で、一人の少女画家が最後に描いていた、未完の一枚。美空の心が動くたび、止まった時間は10秒ずつ進み、砲弾は一発ずつ近づいてくる。
いいねの数か、自分の目で見た真実か。AIに描かせるのか、AIと歩くのか。
SNSの炎上、写真とAIが変えてしまった「絵」の意味、そして手の届かない星。一枚の絵は、二つの世界の戦争を終わらせることができるのか。
うそを重ねた少女が、最後に描くものとは――。
残り、70秒。
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