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紅羽 慧 2017/03/07 公開 2017/03/07 01:06 更新
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手が、震える。
理由はわかっている。わかっているが、止められない。
しんらはそれを、ずっと黙って抱えてきた。
戦争と、異星体の侵攻。その傷が癒えるより早く、世界は「元通り」になったと言った。
学校では毎朝、全校生徒が錠剤を二粒飲む。誰も理由を問わない。しんらだけが、飲むふりをして捨てていた。
孤立。そして、母の死。「生まれてくるべきではなかった」という感覚が、長い時間をかけて彼の中に根を張っていた。
それでも、しんらには探すべき人――父、ハルトがいた。
彼を探して、見知らぬ世界へ向かうしんら。その旅の途中で出会ったコスメアは、他者の傷は癒やせるのに、自分の傷だけは癒やさない少女だった。しんらはその目の奥に、似たものを見た気がした。生きることを、どこかで諦めた者の目を。
共に戦い、共に傷つくうちに、しんらは気づいていた。この人を、失いたくないと。
行く先々で、何かが二人を引き離そうとしていた。それでも二人は離れなかった。弱いところを見せ合っても、痛みを打ち明けても、幻滅しなかった。まるで、引き寄せられているかのように。何が二人を引き寄せていたのか。
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