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雉白書屋 2024/04/05 公開 2024/04/05 10:50 更新
――カッチコッチカチコッチ
野田は壁に掛けてある振り子時計の音を妙に懐かしく思った。
夢の中にいたせいだろうか。何の夢かは覚えていないが、旅をしていたような気がする。ともすればこの安堵感もそのせいだろうか。
野田は何度か大きく瞬きをし、そしてまた目を細めた。
自宅の食卓。ぼやけた視界。その中、一部分だけ眩く感じるのは寝起きのせいか。
……いいや、目の前の鮭の切り身。その潤沢な脂が部屋の照明によって輝いて見えるのだ。
それに気づくと野田の鼻の中、肉壁を押しのけ、また滑るようにして香りが脳へと流れ込み、唾液の分泌を促し、喉を鳴らせた。
「おぉい、母さんや」
「え、あ、はーい。えっと、まずはお茶ね。はいはいどうぞ」
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