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熾星 2026/06/26 公開 2026/06/26 17:22 更新
私がSNSで婚約を発表した直後、鎌倉の民宿で使える宿泊割引券が一枚届いた。
額面は千円。
送り主は、婚約者の高橋翔太だった。備考欄には、信じられない言葉が書かれていた。
結婚準備金。無償贈与。
私はスマホの画面を数秒見つめたまま、自分の目を疑った。婚約前、両家の話し合いでは、高橋家が百万円を結婚準備金として用意することになっていた。決して多い額ではない。けれど、少なくとも誠意を示すものではあった。
それなのに婚約の席で、彼は千円の民宿割引券を私の前に放り出した。
「高橋翔太、これはどういう意味?」
銀座の和食店の個室には、両家の家族がそろっていた。卓上の料理はまだ湯気を立てていたのに、その割引券が置かれた瞬間、部屋の空気だけが一気に冷えた。
高橋翔太は椅子の背にもたれ、目に隠しもしない軽蔑を浮かべていた。
「どういう意味って、見ればわかるだろ。今のお前の価値はそれくらいだってことだよ」
私は眉をひそめて彼を見た。
「約束した百万円の結婚準備金は? どうして千円の宿泊割引券になっているの?」
高橋翔太は、まるで笑い話でも聞いたように鼻で笑った。
「佐倉小春、お前、まだ自分が清らかな令嬢だとでも思ってるのか? 腹に子どもがいるんだぞ。俺以外に、誰がお前をもらうっていうんだ?」
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