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かんぱく 2026/04/20 公開 2026/06/24 12:00 更新
冷戦末期、東西陣営が覇権を争っていた頃、突如この世とは理(ことわり)の異なる異界――ダンジョン――が各地に出現した。半世紀が過ぎた今、ダンジョンは都市のインフラに完全に溶け込んでいる。魔物を倒すと得られる「魔石」が電気とガソリンに取って代わり、ニュースでは「ダンジョンでの行方不明者数」が天気予報と同じ無機質なトーンで読み上げられる。
物流センターのシステム保守を10年間担当してきた春山は、AI移行による人員整理で職を失い、ダンジョンの残骸を拾い集める清掃員(ハイエナ)として働き始める。手に入れたスキルは「メニュー高速化」—誰も見向きもしない能力だ。
しかし春山の目には、他の誰も気にしない「ズレ」が見えていた。
——魔石のドロップ位置が、地形と無関係に等間隔で並んでいる。魔法の余波が、毎回まったく同じ半径で止まる。魔物が死ぬとき、骨も血も残さず消える——まるで「オブジェクトの削除処理」のように。
10年間、誰も触れたがらない古いコードと格闘してきた春山には、これらの「現象」が別の言葉で見えていた。
誰にも頼まれていない。報酬もない。名前も残らない。それでも放置できない。
壊れたシステムを見過ごせない。それが10年間、保守員として働いてきた彼の矜持だった。
だから春山は、今日も迷宮へ向かう。
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