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九葉(くずは) 2026/02/21 公開 2026/02/21 12:08 更新
「クロエ・アシュフォード。貴女の罪を、ここに宣告する」
王城の夜会で、エドワード第二王子に断罪されたクロエ。聖女マーガレットを虐げた悪役令嬢として婚約を破棄され、父からは勘当を言い渡される。
けれどクロエは泣かなかった。「皆さまのお幸せを祈っております。さようなら」と微笑んで夜会を去り、母の形見の懐中時計だけを手に、辺境の街へ向かう。
前世は化粧品メーカーの研究開発部で過労死。二度目の人生も「便利な道具」として使い捨てられたけれど、三度目はない。だから今度こそ、自分の手で、自分の居場所を作る。
辺境の空き家で石鹸工房を開いたクロエのもとに、毎週通ってくる寡黙な青年がいた。窓の立て付けを直し、値段が安すぎると叱り、嫌がらせを受けた翌朝には工具箱を持って現れる──名前はカイ。ただの常連客のはずなのに、妙に上質な手袋を持ち、商いの内情に詳しく、この辺境の領地法にまで通じている。
やがて公爵家から「帰って来い、製法を渡せ」と使者が送り込まれ、工房への圧力が強まる中、クロエは毅然と拒み続ける。
母が遺した秘密。辺境伯領の推奨商人という盾。帳簿に刻まれた不正の記録。そして、あの青年の正体──。
自分の手で作った石鹸と、自分の言葉で語る真実だけを武器に、クロエは静かに立ち上がる。
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