ヒューマンドラマ 短編

結婚三周年、妻は僕がデザインした結婚指輪を初恋の男に贈った

熾星 2026/06/26 公開 2026/06/26 15:46 更新

あらすじ

 結婚三周年の記念日。

 僕は一週間前から、銀座にあるフレンチレストランの個室を予約していた。テーブルには白い薔薇とキャンドルを並べ、神崎清音が好きなイチジクのデザートワインも用意していた。

 僕は彼女の向かいに座り、手の中でベルベットの指輪ケースを握っていた。中に入っているのは、僕が自分でデザインし、自分の手で磨き上げた銀杏の葉の結婚指輪だった。

 三か月かけて作った作品だった。指輪の内側には、たった一言だけ刻んである。

 清音、余生を君に。

 せめて今日くらいは、彼女が僕をちゃんと見てくれると思っていた。

 けれど清音は、冷めた顔でグラスを置き、僕の動きを遮るように手を伸ばした。

「凛也。毎年、贈り物を用意するのはあなたでしょう。今年は先に、私からのものを見て」

 僕は一瞬、言葉を失った。

 清音はバッグから白い箱を取り出し、僕の前へ押し出した。箱が開いた瞬間、僕の手は宙に浮いたまま固まった。

 中に入っていたのは贈り物ではなかった。

 二枚の書類だった。

 一枚は、すでに必要事項が書き込まれた離婚届。

 もう一枚は、彼女と江藤蓮司の婚姻届だった。

 僕はその二枚の紙を見つめた。喉の奥が、何かに塞がれたようだった。

「清音……これは、どういう意味?」

 神崎清音は僕を見上げた。声は、まるで何でもない用件を告げるように平坦だった。

「蓮司が帰ってきたの」

 彼女はそこで少し間を置き、僕が理解できていないと思ったのか、さらに続けた。

「子どものころ、私は蓮司と約束したの。いつ、どんなときでも、彼が戻ってきたら私は彼の隣に立つって。今はあなたと結婚しているけれど、人は約束を守らなきゃいけないでしょう」

 清音は離婚届を指先で軽く叩いた。

「これはあなたの分。署名して、持っていって。あなたが署名すれば、私は蓮司との婚姻届を出せる」

 彼女の視線が、僕の手元にある指輪ケースへ落ちた。

「あなたが用意した指輪は、ちょうどいいから置いていって。私と蓮司への結婚祝いにするわ」

 僕は指輪ケースを握りしめた。ケースの角が掌に食い込み、指の骨が白くなるほど痛んだ。

 五年だった。

ポイント

総合ポイント 84
日間ポイント 0
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 7083.3% ブクマ×2 1416.7%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

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ブクマと評価ポイントの推移

10/27〜11/02(7日間)
ブクマ 7+0(7日間)
8 7 6 10/27 10/30 11/02
評価ポイント 70+10(7日間)
70 65 60 10/27 10/30 11/02

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
11/02 7 ±0 70 ±0
11/01 7 ±0 70 ±0
10/31 7 ±0 70 ±0
10/30 7 ±0 70 ±0
10/29 7 ±0 70 +10
10/28 7 ±0 60 ±0
10/27 7 ±0 60 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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