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菊藤耕太郎 2020/11/19 公開 2020/11/20 00:27 更新
11月2日の深夜。
翌日に全日本剣道選手権大会を控えた警察官・工藤正は、人気の消えた日本武道館へと足を運んでいた。
剣道家として数々の実績を残してきた工藤だったが、その心は深く沈んでいた。
かつて剣を交えた男、元警察官の剣道家・井上源七郎が、連続殺人事件の容疑者として逮捕されたからだ。
剣とは何なのか。
自分がこれまで歩んできた剣の道には、本当に意味があったのか。
そんな迷いを抱える工藤が日本武道館の前で目撃したのは、到底この世のものとは思えない光景だった。
軍服姿の巨大な剣士と、金髪碧眼の小柄な少年が、真剣を手に死闘を繰り広げている。
少年の名は、サービス・ホープ。
毎年11月2日の夜、靖国刀を媒介として現世に姿を現す戦没者の英霊たち。
彼らと剣を交え、その魂を鎮める者は「剣の神子」と呼ばれていた。
そして工藤もまた、この夜、日本武道館という土地から選ばれたもう一人の「剣の神子」であることを知らされる。
やがて現れる、恐るべき最後の英霊。
さらに、戦没者たちの怨念から生まれた異形の怪物。
現代剣道の達人と、謎多き異境の剣士。
二人の剣が交わるとき、静かな秋の夜は、人と幽鬼と怪異が入り乱れる戦場へと変貌する。
これは、一人の剣道家が怪異との邂逅を経て、再び己の剣と向き合うまでの物語。
そして後に、前人未到の全日本剣道選手権大会三連覇を成し遂げる男が経験した靖国刀にまつわる怪奇異聞である。
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