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莵月 2026/07/05 公開 2026/08/01 11:24 更新
戦が続く世。京の流通は乱れ、人も物も“流れ”を失いつつあった。
伏見で菓子を扱う男は、ある違和感に気づく。
――なぜ、どれも同じ味がするのか。
見た目は整い、評判も高い。
だがそこには“覚えられる味”がなかった。
やがて彼は知る。
京の流れは、巧妙に「整えられ」、選ばれる価値さえ作られていることを。
その裏には、商人だけでなく、寺社や公家すら絡む大きな意志があった。
流れを握る者たち。
流れに従う人々。
その中で男は問う。
――本当に、このままでええんか。
答えは一つやなかった。
比叡の山は、流れを見極める。
石清水は、人と人を結ぶ。
そして男は気づく。
流れは奪うものでも、止めるものでもない。
整え、結び、残すものやと。
やがて京に広がる、わずかな違和感。
人々は“選び直し”を始める。
それは静かな変化。
だが確実に、価値を揺るがしていく。
流れを支配しようとした京屋の主・宗兵衛。
彼もまた、過去に流れを失いかけた者だった。
守るために濁すのか。
残すために整えるのか。
対立は、やがて融合へと変わる。
違いを消すのではなく、違うまま束ねる――
京の組紐のように。
そして迎える、石清水八幡宮の湯立神事。
立ちのぼる湯気。
人に分けられるしぶき。
言葉にならない“何か”が、人々の中に通っていく。
流れは、もう止まらない。
それは戦でも、勝ち負けでもない。
人が選び、人が結ぶ、新しいかたち。
――ほんまもんが、残るように。
これは、水のように流れ、
木のように育ち、
人の手で結ばれていく物語。
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