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kamakura betty 2023/10/19 公開 2026/09/22 10:26 更新
かつて猿楽(能)師が居を構えたことでそう呼ばれた神田猿楽町は、後に書籍の取次店や古書店が軒を連ね賑わったが今はすっかり様変わりしビルが林立する街に。そんな中で数十年暖簾を守り続けている寿司屋から主人の昔話が聞こえてくる。本が好きで本の力を信じる主人にとって古書店・家伝文庫は記憶から消えることのない大事な思い出だ。世阿弥の教えに心酔した書店主は能にまつわるあらゆる関連の本を天井までの棚に詰め、世阿弥のごとく手変え品替えその本たちの面白さを後世に伝えようとしていた。しかし店主が亡くなると無情にもその古書たちは建物の瓦礫ごと撤去され、そのことで成仏できない店主は亡霊になってしまう。大切にしてきた古書たちへの無念、書籍離れした現代への憂患はやり場がなく、やがて亡霊は昔話に呼ばれるかのように寿司屋に現れる。「あんたの店があったところを通るたび手を合わせるんだよ。ここ神田猿楽町一帯には本たちの怨念が天然ガスみたいにプスプス燻ぶってるからね」そう話す寿司屋の主人は書店主の亡霊から自分の人生を認められ、あらためてこれまでを振り返る。しかし長年心がけ実践してきたものは、実は世阿弥と同じ表現奥義を無意識に身につけているのであった。
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