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他力本願寺 2026/08/08 公開 2026/08/15 21:30 更新
異世界の寒村に転生したユアンには、派手な魔法も規格外の能力もなかった。
あるのは前世で七年間、種苗会社の「種芋屋」として働いた経験だけ。
麦が遅霜で全滅した年、ユアンは南方から三個の芋を手に入れる。
これなら、この村を飢えから救えるかもしれない。
そう信じて畑に植えた。
葉は猛烈に茂った。
――だが、掘っても芋は一個もなかった。
なぜ南では実る芋が、北では実らないのか。
三個の芋から始まった試行錯誤は、やがて四千三百株の選抜、毒による事故、種芋の盗難、原因不明の病気、商人との対立へと広がっていく。
そして八年後。
麦が再び全滅した村には、二百一人の住民と、七十三日後まで食料をつなぐしかない畑が残された。
農業は、奇跡では人を救えない。
失敗を記録し、種を残し、殖やし、配り、次の世代へ渡して初めて、人を救える。
これは三個の芋から始まり、四十年後の「餓死者ゼロ」へ至る、北辺の農業改革の物語。
そしてその始まりの日、ユアンの帳簿に記された収穫量は――ゼロだった。
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