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たむ 2026/07/22 公開 2026/08/20 15:00 更新
高校二年生の音無透真は、幼い頃から幽霊を見ることができた。
幽霊と話すこともできる。
そして透真には、もう一つだけ、誰にも知られていない能力があった。
幽霊同士の会話を聞くことができるのだ。
ただし、死者同士の言葉は、人間の声としては聞こえない。
壁を爪で引っかく音。
誰もいない廊下を歩く足音。
鳴るはずのない電話。
止まった風鈴。
遠くで繰り返される踏切の警報音。
それらの音に交じって、死者たちは会話をしている。
怖がりな透真は、できる限り幽霊と関わらずに生きてきた。
しかし、亡くなった祖母から言われた言葉だけは忘れられない。
「死んだ人が怖いんじゃない。誰にも届かない言葉のほうが、ずっと怖いんだよ」
透真は、死者が残した最後の想いを家族や友人へ届けるようになる。
謝罪。
感謝。
告白。
誰にも発見されていない遺品の場所。
自分を殺した人間の名前。
死者の言葉を届けるたび、透真は少しずつ恐怖と向き合っていく。
そんな夏の夜、午前零時十三分。
町内放送のスピーカーから、存在しないはずの女性の声が流れる。
『明日、こちらへ来る方のお名前をお知らせします』
放送が読み上げたのは、透真の同級生・早坂澪の名前だった。
翌日、学校に現れた澪は生きていた。
ところが放課後の教室で、二人の幽霊が澪を見ながら話している。
「この子、まだ自分が死ぬことを知らないんだね」
「明日の午前零時十三分には、僕たちと話せるようになるよ」
そして澪の背後には、彼女と同じ顔をした幽霊が立っていた。
透真は、死者の想いを届けるため、そしてまだ生きている澪を死者の会話から取り戻すため、十三年前に途絶えた町内放送の秘密を追い始める。
だが、調査を続ける透真の耳にも、少しずつ異変が起こる。
生きている人間の声が遠くなり、死者たちの声だけが鮮明になっていく。
やがて幽霊たちは、透真本人の知らないところで話し始める。
「もうすぐだね」
「ようやく、この子にも伝えられる」
「音無透真が、本当はいつ死んだのかを」
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