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德薙零己 2026/11/02 公開 2026/11/02 01:45 更新
承和6(839)年、加賀国の国司の息子である8歳の春太郎(後の春日宅成)は、新羅賊に襲撃され異国へ拉致される。新羅の奴隷収容所で唐の少女・蓮(れん)と出会った春太郎は、地獄のような過酷な環境で生き抜くため、異国の生きた言葉や操船術を貪欲に吸収し、嵐の夜に船を奪って蓮とともに脱出を果たす。
北の渤海国に漂着した二人は靺鞨(まっかつ)族の猟師たちに救われて成長する。春太郎は完璧な渤海語や商取引を身につけ、16歳で蓮の故郷・唐の揚州へ渡るが、蓮の親族から異邦人として冷遇される。蓮との間に我が子が宿るも、密航防止の厳法や天台僧・円仁の帰国を支える大義のため、妻子を唐に残して苦渋の決断で単身日本へ帰国し、春日宅成と名乗る。
帰国した宅成を待っていたのは「異狄の穢れ」としての差別と最底辺の官位であった。周囲から「蛮国の言葉など無駄」と嘲笑されつつも、彼は夜な夜な異国語の記録を整理し、「言葉」という武器を密かに研ぎ澄まし続けた。
貞観元(859)年、渤海使来訪に伴う外交危機において、太政大臣・藤原良房らに見出された宅成は、生きた渤海語を駆使して交渉を成功させ国家の危機を救う。2年後、再び訪れた渤海使節団の中で、通訳として現れた15歳の青年・宗健(そうけん)と出会い、彼が揚州に残した我が子であり、母・蓮も渤海で父を待っていることを知る。
貞観4(862)年、朝廷の特使として渤海へ渡った宅成は、16年ぶりに最愛の妻・蓮と奇跡の再会を果たす。無力だったかつての少年は、自ら磨き抜いた「言葉の架け橋」によって、引き裂かれた家族と自らの運命を結び直すのであった。
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