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くらたん 2026/10/23 公開 2026/10/23 14:14 更新
「奴は四天王の中でも最弱。いや、魔王軍の恥だ」
玉座の間で、四天王筆頭グラドスが笑った。剛力、幻術、猛毒。居並ぶ同僚の中で、俺に使えるのは治癒ひとつ。しかも魔族の体には効きが悪く、擦り傷を塞ぐのに半日かかる。
角を片方折られ、軍をクビになった三日後。森で行き倒れていた俺を拾ったのは、回復役のいない貧乏勇者パーティーだった。
その晩、勇者リュッカが魔物に腹を裂かれて運び込まれる。聖女の祈りは届かない。
俺は、いつものように手をかざした。半日かけるつもりで。
――三つ数える前に、勇者は立ち上がって走っていた。
「……え、何これ。前より元気なんだけど」
魔族の治癒は、人間には効きすぎる。
「あなた、今日からうちの子ね。うちで一番偉いのは回復役だから」
一方そのころ魔王軍では、野戦病院の列が城門の外まで伸びていた。
やがて元同僚の四天王が、一人ずつ俺を連れ戻しに来る。
「右膝、まだ治ってませんよね。――勇者殿、右です」
全員のカルテを書いていたのは、最弱の俺だった。
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