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泥沼 2022/12/27 公開 2022/12/27 17:41 更新
この世界には2種類の奇病がある。
1つは生まれつきのもの。
もう1つは呪いによるもの。
しかし、必ずしもそれが悪いものだとは限らない。なにせ奇病を患う者だけが、魔法を使うことができるのだから。患者が精神的に苦しめば苦しむほど魔力は増大する。
故に奇病との付き合い方は人それぞれである。
それを治療し魔力を失うもの。
その苦しみに耐え魔法を使い続けるもの。
それに侵し尽くされ永い眠りにつくもの。
そもそもそれを自覚していないもの。
そしてこの世界には、自身が奇病を患いながらも、その魔力を使って他者の奇病を治療する“奇病医”が存在する。
そう、この街にも。
読者の中にも知らないものはいないだろう。
若く優秀だが冷酷かつ守銭奴。
かの天才奇病医、
「エスメ・ガザニア」
深く帽子を被った少年はそう呟いて、写真の中の燃えるような赤い髪を見つめた。そして持っていた新聞をくしゃくしゃ丸めて運河に捨てる。
きらめく水面を、ポロポロ紙くずを切り離しながら新聞は滑っていき、やがて小橋の側面に貼りついた。その小橋をコツコツとハイヒールが鳴らす。
彼女は長い赤髪を日に透かしながら、エメラルドの宝石眼に大きな屋敷を映した。ふう、と息を吐き、呼び鈴を鳴らす。
そして屋敷の扉が開いた。
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