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uta 2026/10/08 公開 2026/10/08 20:00 更新
「レイリア。お前の夢物語はもういい。式典から外れろ」
戴冠式まで、あと十日。二年かけて組み上げた進行台本・全九十八項目は、王太子殿下の手で暖炉に投げ込まれました。理由は「職務への妄想的執着」。
わたくしレイリア・ウィンドールのギフトは〈夢見〉。戦闘力ゼロ、判定は『外れ』。毎夜わたくしは、三百年前に滅びたオルデン王国の、最後の戴冠式の夢を見ます。――三百十二回。王の目で、大神官の目で、視点を変えて、何度も、何度も。
前世は進行管理十二年の社畜でした。控室で倒れて、そのまま目覚めませんでした。ですから今世でも、聖油の調合比を逆算し、参列貴族二百十四名の動線を確認し、蝋燭の燃焼時間を算出し、誓約詠唱の『間』を砂時計で三百回測りました。
「では、わたくしは何も申し上げません」
(――言わないとは申しましたけれど。聞かれてもいないですしね)
そして解任の夜、国宝の王冠『オルデンの最後の約束』が、わたくしに話しかけてきたのです。幼い子どもの、拗ねたような声で。
『ねえ、きみ、ぼくの夢を見てるでしょ。三百回くらい』
「三百十二回でございます」
『かぞえてるんだ』
「記録官ですので」
――ところで、前世からの習慣をひとつ。重要書類のバックアップは、必ず三箇所。これはもう、治りません。
完璧主義の元社畜令嬢が、燃やされた台本と、滅びた王国の記憶と、三百年ぶりに目覚めた王冠とともに、不備だらけの即位式に静かに向き合う物語。
淡々と、けれど確かに。手順は、国を救えるのでしょうか。
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