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森あずま 2020/03/08 公開 2020/03/08 13:22 更新
「私」は大学に勤める物理学者で熱核融合の研究をしている。ある日交際相手のアンナから妊娠の報告を受ける。「私」は妊娠の知らせに喜ぶ反面、以前から付き合っている東花に対する不義に罪の意識を抱いていた。「私」は罪悪感を抱きながら、ロサンゼルスにあるアンナの実家へ挨拶に向かった。飛行機の中で「私」は未来を生きる「私の孫」から使わされたと言う女性に出会う。彼女は「孫」が作り出した装置によって、未来の情報を埋め込まれた受精卵の状態で過去に転送され、この時代で育ち今に至ったという。そして「私」に「孫」からの手紙を託した。「孫」からの手紙にはこれから人類が辿るカタストロフィックな未来と、彼自身が犯した罪、そして未来を変えるための願いが書き記してあった。
手紙の内容は以下のようなものだった。「孫」は約四十年後の2060年に生まれた。その頃世界は三つの連邦のパワーバランスによって成り立っていた。「孫」はその中の一つ、日本と北米を含む太平洋連邦に生まれ、父と母と妹と四人で幸せな日々を送っていた。父は次世代型人工知能の研究者で、財政破綻寸前の日本を人工知能の力で再建し巨万の富を築いた企業の社長でもあった。母は国際政治の研究者で、連邦間のパワーバランスの上にある不安定な平和を危惧し世界政府の樹立を目指す活動家でもあった。「孫」の幸せは、この母と妹の突然の死により崩れ去る。母は連邦間の陰謀を知り、妹とともに拷問の末、殺される。「孫」とその父は真実を知って世を憎み、非倫理的な研究に手を染め始める。父は特異点を超えた人工知能の開発に従事し、完成させながらも精神錯乱に陥り失踪する。「孫」は母が目指した理想を知ろうと努めるが、憎しみに負け、母の理想を受け継ぐことを諦める。そして欲深い人の本質を改変するため、父の開発した人工知能の叡智を利用し、遺伝子操作された異人を生み出した。しかし異人の研究は失敗し、「孫」は全てに絶望する。そんな中、「孫」とその父により生み出された技術によって、遠くない未来に世界が終わる事を知る。それは動かしようのない未来だった。「孫」は自身の罪と、それが生み出した結果を過去に伝え、希望を過去へと繋げる道を選ぶ。しかしそれらを過去に伝えるためには、転送する小さな命と同じ構造をもつ人を代償にせねばならなかった。「孫」は豊かさと力と善良な精神が受け継がれる世界を信じてその命を捧げた。
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