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EMo 2026/08/24 公開 2026/09/25 08:00 更新
京都・宇治で見つけた、千年前の文。
――来世にて、今一度、そなたを見つけよう。
その文を書いたのは、これから紗良が恋をする男だった。
水城紗良、三十歳。独身、職業は看護師。
友人のコロナ感染をきっかけに、一人で京都を訪れた紗良は、宇治川の歴史博物館で作者不詳の古い文と出会う。
知らないはずの言葉を見ただけで、なぜか涙が止まらない。
その日の夕暮れ、霧に包まれた宇治川で、聞いたことのない男の声が紗良の名を呼んだ。
次に目を覚ました時、そこは千年前の平安の都だった。
頼れるものは、充電のできないスマートフォンと、看護師として身につけた知識だけ。
病は祟りと恐れられ、治療より先に祈祷が行われる時代。
紗良は水を煮立て、手や器を清め、呼吸や顔色を確かめる。現代では当たり前の方法で人々の命を救う一方、いつしか「異国から来た、不思議な術を使う女」と噂されるようになっていく。
しかも、この都には、医学では説明できないもののけが本当に存在していた。
そんな紗良が出会ったのは、誰もが頭を垂れる都の最高権力者、関白・雅継。
多くを語らず、誰にも弱みを見せない雅継と、身分の違いにも臆せず彼の命を守ろうとする紗良。
「しばし、そこにいよ」
それは、雅継が初めて紗良に求めた、ささやかな願いだった。
文を交わし、離れては互いの姿を捜し、二人は少しずつ心を近づけていく。
しかし、次の満月には、紗良が現代へ戻る道が開くという。
帰れば、もう二度と雅継には会えない。
残れば、家族のいる現代を捨てることになる。
紗良は千年前に残るのか。
それとも、愛する人に別れを告げて現代へ帰るのか。
そして紗良はまだ知らない。
京都で読んだあの文が、二人の恋の結末から生まれることを。
現代の看護師と、心を見せない平安の関白。
少し笑えて、やがて切ない、千年越しの恋物語。
――たとえ貴方が姿を変えても、私はきっと分かるから。
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