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yukkie 2025/02/27 公開 2025/03/05 04:30 更新
夜の闇が深まる中、森の小道を一組の夫婦が急ぎ足で進んでいた。女性は腕に小さな包みを抱き、男性は周囲を警戒しながら歩を進める。時折、遠くから犬の遠吠えと人々の怒号が風に乗って聞こえてくる。
「早く、レイラ。彼らが追いついてくる」
紫がかった黒髪の男性、ザイルは妻の背中に手を添えた。彼の目は暗闇の中でわずかに赤く光っている。
「でも、アルトを…このまま置いていくなんて…」
レイラは腕の中で眠る幼子を見つめた。わずか三歳のアルトは、母親の温もりに包まれ、何も知らずに安らかな寝息を立てている。その小さな額には、かすかに紫がかった産毛が生えていた。
「他に方法はない。俺たちが一緒にいれば、アルトは常に危険にさらされる」
ザイルの声は強く聞こえたが、その瞳には深い悲しみが宿っていた。彼は息子の頬に触れ、小さく震える指で愛しい顔の輪郭をなぞった。
「あの戦争さえなければ…」
レイラの言葉は途切れた。五年前、人間と魔族の間で勃発した大戦は、両種族の間に深い溝を作り出した。人間たちは魔族への憎しみを募らせ、魔族の血を引く者たちを容赦なく追い詰めていった。
魔族と人間の間に生まれた少年が大人になっていく物語です。
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