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畑野春樹 2026/11/01 公開 2026/11/01 20:52 更新
千葉県市原市の郊外に、五つの温室を持つ小さな植物園「根の庭」がある。
そこには、塊根植物やユーフォルビア、多肉植物など、少し風変わりで個性的な植物たちが並んでいる。
店主の緑川雄三は、七十を過ぎた無口ともおしゃべりともつかない不思議な男。植物の知識は豊富だが、商売っ気はあまりない。値札もつけず、気に入った客がいれば植物を譲る。ときには、買おうとする客に「それは、まだ買わない方がいい」と言うことさえある。
そんな根の庭には、さまざまな人がやってくる。
夫婦の会話が少なくなった二人。仕事や将来に迷う若者。定年を迎え、これからの暮らしを考える男。家族との関係に悩む人。大切な人を失った人。そして、ただ植物が好きで、週末になると顔を出す常連たち。
彼らは植物を探し、育て方を尋ね、緑川と何気ない会話を交わす。
植物の名前や育て方から始まった話は、いつしか仕事や家族、恋愛、老い、人生の選択へと広がっていく。
緑川は、人生の悩みに答えを出そうとはしない。気の利いた助言をするわけでもない。ただ、植物の話をしながら、ときどき余計な一言を挟み、客の話に耳を傾ける。
植物は、すぐには大きくならない。花が咲くまで何年もかかるものもあれば、枯れたように見えて、季節が巡ると再び芽を出すものもある。
人の人生も、案外そんなものなのかもしれない。
全20話。植物と人との出会いを通して、誰かの暮らしがほんの少し変わっていく。
市原の片隅にある小さな植物園「根の庭」。今日もまた、誰かが温室の扉を開ける。
これは、植物のそばで生きる人々の、ささやかで温かな物語。
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