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吉野 由麻 2023/08/27 公開 2023/09/03 19:00 更新
目の前で燃え広がる炎。足下に見える黒い影。
その先に見えたのはかつて、自分の悪夢を見せた城の変わり果てた姿だった――
かつては田舎貴族の子爵令嬢として生まれたエミリア・ハールトネン。牧草に塗れながら大口を開けて笑う日々。貧しいながらも幸せな日々だった。優しい兄と幼馴染の少年と愛馬のハミル、厳しいけれど優しい母と、蜂蜜のように甘いけど芯の通った賢い父。エミリアは貧しくても健やかに活発に育っていた。
そんな幸せな日々は、突然崩れていった。
母が何者かに殺され、エミリアはルター公爵に拐かされた。目的はエミリアの父への復讐。エミリアは光も届かない地下室で少ない食糧で労働を強いられた。女がやらないような仕事まで強いられていたが、味方のいない場所では助けは期待できなかった。
このまま、生きるか死ぬかの瀬戸際で苦しみ続けなくてはいけないのだろうか。生きる希望も見出せないまま生きていると、ある日突然隣国の軍が攻めてきた。混乱に乗じて地下室から出ると、城は原型を留めないほどに壊されていた。
どこに行くことも出来ずにいると、ルター公爵に見つかり捕まってしまった。
敗戦国として金、土地、糧、武器、あらゆるものを取り上げられ、王家や公爵家から娘を差し出すことも求められた。愛娘を差し出したくないルター公爵はエミリアを娘だと偽って差し出した。
その時、彼の男の心を揺さぶった。
「まさかお前が献上されるとは夢にも思わなかった」
エミリアの目の前にいるのは、幼馴染の少年の面影を残した青年ルドヴィク・ガルデッラだった。
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