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八咫烏葵 2026/11/06 公開 2026/11/06 10:10 更新
「おまえは花と草の話しかできないんだから、今夜は壁際で花でも見ていろ」
男爵令嬢フランシーヌは、亡き母の薬草園で育ち、目をつぶっても二百種類の草を嗅ぎ分けられる。けれど婚約者の前では、二年間、草の話を封じてきた。
王太后さまの七十のお祝いの晩餐。
婚約者が「半値にした」と自慢する仕入れのスープが運ばれてきたとき、壁際の彼女だけが気づいた。
――芹の茎に、紫の斑点。湯気の奥に、鼠の匂い。
白鷺芹とそっくりの毒草、鷺殺しだ。
「黙って花でも見ていろと言っただろう」
その直後、上座で、王太后さまの銀の匙が床に落ちた。
毒の正体と、助ける方法を知っているのは、壁際にいたわたしだけ。
そして「氷の侍医」と呼ばれる侍医長の公爵は、十二年前の夏、薬草園で「ちぎって、嗅いで」と教えてくれた女の子を、ずっと覚えていた。
※約1万字の読み切り短編です。ざまぁは軽め、最後は甘く終わります。
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